8月2日に札幌市内の内田洋行ユビキタス協創広場U-calaで会員向けセミナー「高性能住宅のタイプとパッシブ換気システムの住宅事例紹介」を開催。
パッシブシステム研究会では、去る8月2日に札幌市内のサッポロファクトリー内にある内田洋行ユビキタス協創広場U-calaで会員向けセミナー「高性能住宅のタイプとパッシブ換気システムの住宅事例紹介」を開催。理事長で北海道科学大学名誉教授の福島明先生が「民家型超高性能住宅と宇宙船型超高性能住宅の特徴とメリット」をテーマに講演したほか、会員3社がパッシブ換気住宅の施工事例を発表しました。
最初に講演を行った福島先生は、住宅の超高断熱化がもたらしたものとして、①ペリメーター(室内で窓際など外部環境の影響を受けやすいエリア)の解消②熱容量の増大③超低負荷暖房の実現―を挙げ、その一方で室内の温度ムラが新たな課題となっていることを指摘。「超高断熱住宅で温度ムラを解消する方法の一つとして、パッシブ換気・床下暖房はものすごい可能性を秘めている。小さな熱量を分散して温度ムラを解消するには、全館空調だと大量の空気をずっと室内全体に回す必要があるし、エアコン1台だと熱を室内全体に分散することができない。その点、パッシブ換気・床下暖房は、空気を自然循環させるので不快な気流が生じず、温度ムラがなくなれば止まるのが大きなメリットだ」と、超高断熱化とパッシブ換気・床下暖房の相性の良さを強調しました。
また、福島先生は超高性能住宅の今後の方向性として、日射や通風などの外部要因を排除し、室内環境は全館空調システムやHEMSを中心に寒さ・暑さに対処する“宇宙船型”と、日射や通風をうまく活かして室内環境を快適に維持し、空調システムなどは補助として利用する“民家型”の2つのタイプを説明。「宇宙船型は低透過型の窓が必要になり、民家型は高透過型の窓が必要になるが、民家型は外壁の方位によってガラスの種類(日射透過率)を最適化する方向に行くべき。それで暖房費はかなり変わるはず。住宅ごとにどんなガラスを使えばいいのか、サッシメーカーに提案してもらうといいのでは」と、方位によって適切な日射透過率の窓ガラスを選択することが、暖房費削減に効果的だと話しました。
講演の後には、(株)ボンアーキテクツの森徳彦社長がオホーツク・遠軽町の施工物件、(株)江田建設の江田清三社長が小樽・銭函の施工物件、辻野建設工業(株)の辻野浩社長が当別や札幌などの施工物件をそれぞれ紹介。最後に福島先生が「住宅の性能が大きく向上し、家づくりがこれまでとは別のフェイズに入ったことを意識してほしい。パッシブ換気も住宅性能の向上によって進化したと感じており、換気量と室温の数値解析プログラムなどを使ってさらに科学的に進化を続けていければいい」と話し、セミナーを締めくくりました。