2月14・15日に札幌で第10回「大合宿」を開催しました。
NPOパッシブシステム研究会では、去る2月14・15日に同研究会の最大行事となる第10回大合宿を、札幌市内のジャスマックプラザホテルで開催。『なんでも話そうパッシブ換気「基本と現在、わかっていること・分からないこと」』をテーマに、理事長の福島明先生を始め理事・顧問の先生方が講演を行ったほか、恒例の「なんでも話そう生討論」では参加会員がグループに分かれて施工技術や設計方法、失敗したケースなどについて議論を交わしました。
2020年以来の開催となった今回の大合宿では、1日目の冒頭に福島先生が「3年ぶりに会員のみなさんが集まって話ができる機会ができた。この間に行ってきた活動や取組みの報告も含め、いろいろと議論を深めるチャンスになると思う」とあいさつ。
続いて理事・顧問の繪内正道先生と、名誉理事の(有)フォルムデザイン社長・中野隆二氏が、昨年発行した『パッシブ換気の計画・設計の要点』について紹介しました。
中野氏は「この研究会には毎年新しい会員が入ってくるが、パッシブ換気の設計をどのように行えばいいのかわからないという声も聞く。そこで新しい会員にもパッシブ換気の設計・施工ノウハウを伝えたいと考え、この冊子の制作を思いついた。ここに載せ切れなかった内容は、第2の冊子を制作し掲載することを考えている」と、冊子を発行した目的や掲載内容のポイントなどを説明。
繪内先生は、パッシブ換気について1995年に(一社)日本建築学会の委員会等で開発・研究に取組み、報告書をまとめた後、普及に至るまでに制作・改訂を行った設計・施工マニュアルのエピソードなどを紹介したうえで、「これだけ電気代が上がってくると、電気暖房で光熱費に困っている人も多いだろう。そこで熱源に電気・ガス・灯油をそれぞれ使う住まいにしておけば、何かあった時のリスクを分散できる。例えば灯油300リットルだけで1シーズン暖房できるパッシブ換気の家を造ることができれば、ホンの少しの熱を供給するだけで、室温も換気量も簡単に確保できるのではないか。これからはエネルギー価格が2倍、3倍になることも念頭に、家づくりにおいて住まい手が困らないよう手助けすることが、私たちの重要な仕事と言える」と、今後の家づくりの方向性を示唆しました。
窓の性能向上で床下放熱器・床面開口の位置は自由に
休憩をはさんで行われた福島先生の講演『パッシブ換気現在進行形(ペリメータレス デマンド換気暖房について)』では、現在会員が建てている住宅は窓の性能が昔の断熱外皮並みに上がったことによってペリメータレス(=室内で窓際など外部環境の影響を受けやすいエリアがないこと)となり、パッシブ換気では床下放熱器と床面開口の位置を窓下に限らず自由に設定できるようになったほか、1階天井ふところの横方向の空気の流れも考える必要がなくなったと説明。
福島先生は「UA値が0.4Wから0.25Wになると、パッシブ換気に必要な熱量は半分になり、循環させる空気量も半分で済んで対流もなくなる。さらに少ない空気循環量で2階も十分暖房できる。放熱器の数も半分で済み、床下エアコンでも全室温度ムラなく暖房することが可能だ」と話し、ペリメータレスによるパッシブ換気を来年度の活動テーマの一つとして、マニュアルを整備し設計事務所会員が設計を行える体制を整える考えを示しました。
今後の方向性や失敗談など活発に議論
1日目の最後は大合宿恒例の『なんでも話そう生討論』が行われ、パッシブ換気の技術・設計方法とこれまでの失敗談について、会員が6つのグループに分かれて議論。
技術・設計方法では「床面開口のガラリをなくしたい」「今後はリフォームでのパッシブ技術の展開が避けて通れないのではないか」「高齢化が進む中、メンテ不要であることを大いにPRするといいのでは」など、失敗談では「屋根の排気塔が大雪で埋まり、排気は普通に行われていたが雪庇の原因になった」「排気グリルにビニールを貼って排気を止めていたお客様がいて結露が起こった」などの意見や体験談が発表され、その後の懇親会でもお酒を酌み交わしながら活発な議論が行われました。
2日目は、最初に繪内先生が『なんでも話そう生討論』のまとめを行った後、顧問で(有)タギ建築環境コンサルタント代表のサディギアン・モハマッド・タギ氏が『旧荒谷邸 パッシブ換気の原点』をテーマに講演。続いて賛助会員のプレゼンテーションが行われ、盛況のうちに閉会となりました。