換気設備が在っても換気ナシ、にしないために
村田さやか、北海道立総合研究機構北方建築総合研究所
研究所に勤務してから二十数年の間に、“換気”が全国的に注目された時期が2回ありました。1回目は、2003年のいわゆるシックハウス法と呼ばれる建築基準法の改正前後。機械換気設備の設置が義務化されたときです。2回目は、記憶に新しい2020~2023年のコロナウイルス感染症の拡大。それらの時期は、換気や空気質の実態調査をする機会を多くいただきました。流行は20年周期で繰り返されると言いますが、換気ブームも周期的に来るのかと思ったくらいです。
2003年頃には、北海道では北方型住宅基準やBIS(断熱施工技術者)認定制度のおかげもあり、断熱気密住宅での換気はすでに必須になっていました。そのため、換気回数0.5回/hを満たすために換気設備の容量を多少大きくすることはあったにしても、新築住宅の換気設備の設計では大きな混乱はなかったように思います。パッシブ換気の住宅も、局所換気や中間期・夏季の換気のためにトイレや浴室に機械換気設備を備えていましたから、基準法改正に対応できました。この時期の調査では、新築よりも、数年~10年近く経過した機械換気設備の方が問題でした。フィルターが目詰まりしていたり、フィルターが劣化してボロボロと崩れたり、清掃等をすると風量は多少回復したものの装置の想定される設計風量には満たないもの等々。換気装置が在っても、換気はほとんどされていない状況が見られました。
それから約20年、メンテナンスが不要または簡単で、換気性能が長期的に続くようにすることが如何に重要か、機会がある度に注意喚起を行ってきました。機械換気設備もメンテナンスをしやすいように変わってきました。2020年の感染症拡大によって、換気が意識的にされるようになりましたが、本来は日頃から意識しなくても換気されていてなければなりません。10年、20年前の換気設備は、定期的にメンテナンスされて性能を保っていたでしょうか。換気設備が在っても換気ナシ、では意味がありません。換気を20年周期のブームにするのではなく、20年後までも意識しなくても換気がされている状態が続くように、できることをしていきましょう。